2017年総会とスチュワードシップ・コードの改訂
政府が提唱してきた成長戦略である「日本再興戦略」が、その名称を「未来投資戦略」に変更し、新たにスタートする(2017年6月9日閣議決定)。その中で、コーポレートガバナンスは、安部首相が提唱する成長戦略において重要な位置を維持し、「形式」段階から「実質」段階へと改革されることを期待している。2015年にコーポレートガバナンス・コードが制定され、多くの上場企業が同コードの内容を適用し、「形式」的にはガバナンス体制の整備が進んだように見えるが、実際に中身を見ると対外的に良く見せるために「形式」的に整備されている企業が多く、「実質」的な整備の必要性が見込まれる。
今回の未来投資戦略では「7月株主総会開催」、「ESG」に対する記述があり、更には相談役・顧問等の開示に関する制度を東京証券取引所が夏頃に定め、来年頭に実施することが具体的に明記されている(来年の決算発表時期には上場企業には開示が義務づけられるものと考えられる)。それに先立ち、阪急阪神ホールディングスやJ.フロント リテイリングでは相談役制度を廃止する定款変更の議案が株主総会で可決された。一方で、武田薬品や北陸電力等では顧問・相談役制度を廃止する株主提案があったがいずれも否決された。(経産省のアンケートでは、未だに約78%の国内企業が顧問・相談役制度を採用しているとのこと)
2017年5月29日に日本版スチュワードシップ・コードが改訂され、公表された。改訂前のコードを受け入れている機関投資家は、2017年11月末までに改訂されたコードの各原則に基づき自社の運用体制を再整備する必要がある。今回の改訂では、機関投資家が「アセットオーナー」と「運用機関」に明確に分けられ、「アセットオーナーによる実効的なチェック」、「運用機関のガバナンス・歴相反管理等」、「パッシブ運用における対話等」、「議決権行使結果の公表の充実」「運用機関の自己評価」の5つの項目について議論を行い、盛り込まれた。中でも議決権行使結果の公表に関しては、最近の新聞等で話題になっており、今回の改訂に合わせて一気に進んだように感じる。
3月期決算企業の2017年株主総会が終わったが、東証曰く、今年の傾向としては①株主総会開催日(本年は6/29)の集中度合いが減少傾向にあり、②3週間以上前に招集通知を発送する企業が増加傾向にあり、③招集通知を早期にウェブで開示する企業が増加傾向にあり、④英文の招集通知を作成する企業が増加傾向にある、とのこと。個別の案件としては、黒田電気に対する株主提案が可決された件、J.フロント リテイリングにおいて(名義上の株主でなく)実質株主が株主総会へ出席可能にする定款変更の件、三菱UFJ信託銀行による三菱自動車の議案に対する反対の件などが注目されました。これらはコーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの両輪が少しではあるが機能し始めたことによるもので、今後もこのような案件が増えていくことが想定される。
株式会社CGIR 代表取締役 小橋 伸一郎